ブラームスのオルガン曲

(04/01/01)

 恒例(?)のお正月特別企画ですが、今年は珍しくもブラームス。しかも滅多に耳にすることのないオルガン曲を取り上げてみることにしました。
 ブラームスに関しては特にご紹介するまでもありません。音楽の授業で教った、「ドイツ三大B」の一角です。で、そのオルガン作品ですが、若い頃に書かれた4曲と最晩年に書かれた11曲のコラール前奏曲とで、合計15曲あります。作品名は下記のとおりです。
  • 前奏曲とフーガ イ短調 (Prälidium und Fuge a-moll 1856)
  • 前奏曲とフーガ ト短調 (Prälidium und Fuge g-moll 1857)
  • フーガ 変イ短調 (Fuge as-moll 1858)
  • コラール前奏曲とフーガ「おお悲しみよ、心の痛みよ」 (Choralvorspiel und Fuge über "O Traurigkeid, o Herzensleid 1858)
  • 11のコラール前奏曲 作品122 (Elf Choralvorspiele op. posth. 122 1896)
    1. わがイエスよ、われを導きたまえ (Mein Jesu, der du mich)
    2. 最愛なるイエスよ (Herzliebster Jesu)
    3. おお世よ、私は汝を去らねばならない (O Welt, ich mußdich lassen)
    4. わが心の切なる喜び (Herzlich tut mich erfreuen)
    5. おお愛する魂よ、汝を飾れ (Schmücke dich, o lieb Seele)
    6. おおいかに幸せになるか、汝ら信仰厚き者よ (O wie selig ihr doch, ihr Frommen)
    7. おお神よ、汝やさしき神よ (O Gott, du frommer Gott)
    8. 一輪の薔薇が咲いて (Es ist ein Ros' entsprungen)
    9. わが心の切なる願い (Herzlich tut mich verlangen)
    10. わが心の切なる願い (Herzlich tut mich verlangen)
    11. おお世よ、私は汝を去らねばならない (O Welt, ich mußdich lassen)
 CD1枚に収めるのにちょうどよいくらいの分量ですので、10数種類の録音が存在するようですが、これが意外に手に入りづらく、店頭で購入できたのが4種類(うち1種は中古)。通販で注文したものは9種類のうち3種しか入荷しませんでした。
 何でブラームスなの?と、自問してしまいますが、若い頃に書かれた前奏曲にしてもとてもバロック的ですし、特に晩年の11のコラール前奏曲はロマン派らしからぬ作りで、バッハのオルガン小曲集の延長といってもおかしくないような作品群です。コラールの旋律に基づくシンプルな作品ですので、バロックのオルガン曲と並べてもあまり違和感がありません。それでいながら、やはりこれらはブラームスならではという個性もしっかりと持ち合わせていて、とても不思議な雰囲気の作品に思われます。
 ブラームスが人生の最後に、なぜオルガンのためにのような作品を書いたのかについては、私がさっと調べた範囲では残念ながらわかりませんでした。本当のところ、どういう意図で作られたのかよくわかっていないらしいです。辞世の句のようなものだったのでしょうか?それはともかく、淡い光を放つこの珠玉たちをこうして愛でることができるのは、とても贅沢な気がします。
 では、入手できたものをご紹介していきましょう。ここに紹介するCDには上記の作品がすべてが収められています。また、個人的おすすめ度を星の数で表しました。あくまで私個人の好みに基づいた評価です。


BRAHMS : Complete Organ Works
  ブラームス オルガン名曲集
NAXOS 8.550824 演奏者 ロバート=パーキンス
Robert Parkins
使用楽器 アメリカ ダーラム デューク大学、デューク教会
Duke Chapel, Duke University, Durham, U.S.A
CD番号 NAXOS 8.550824 (香港)
 一番手に入りやすく、しかも一番値段の安いのがこのCDだと思います。
 ホールの残響が豊かなので、前奏曲とフーガでは細かい音の動きが不明瞭になるような感じがします。コラールではテンポを遅めにとって、非常に繊細な感じに仕上げています。特に「わがイエスよ、われを導きたまえ」と「おお悲しみよ、心の苦しみよ」が絶品です。
 録音は1994年。楽器に関するデータは書かれていません。 ☆☆☆☆


ブラームス/オルガン作品集
 
徳間 TKCC-15158 演奏者 クリストフ=アルブレヒト
Christoph Albrecht
使用楽器 ベルリン 聖マリア教会 ヨアヒム=ヴァーグナー製作
Wagnerorgel der Marienkirch Berlin
CD番号 徳間ジャパンコニュニケーションズ TKCC-15158(日本)
 これも入手しやすく、しかも安いCDです。国内版で唯一のブラームスのオルガン作品全集のCDではないでしょうか。
 オルガンは1719年から1721年にかけて製作された40ストップの楽器で、19世紀に何度か改造され、第二次世界大戦後にシューケによって65ストップの楽器として修復されたそうです。今回紹介する中で、このCDで使用している楽器がもっとも古いものです。そのため、他のCDと少し違ってかっちりとした明快な響きがします。バロックのオルガン作品に近いアプローチの演奏と思います。
 録音は1978年。 ☆☆☆


BRAHMS DAS ORGELWERK
  ブラームス オルガン作品全集
TUDER 790 演奏者 ジョルジュ=アタナシアデス
Geroges Athanasiades
CD番号 TUDER 790(スイス)
使用楽器 ヴァルトザッセンのバジリカ ゲオルク=ヤン製作
STIFTSBASILIKA WALDSASSEN - Georg Jann 1982-1989
 非常に特徴のある楽器で、パイプ群を左右に分けて配置し、真ん中に大きな時計が据え付けられています。103ストップの大きな楽器で、美しい装飾が施され、天使の像がたくさん飾られています。音も見た目に違わず甘くまろやかな感じです。
 演奏の方は、特に前奏曲とフーガで細かく切るような特徴あるフレージングが少々耳につきます。クセのある演奏で、あまり好きではありません。コラール前奏曲も総じてテンポが早めで、落ち着いた雰囲気はありません。一番おもしろいのは「わがイエスよ、われを導きたまえ」のレジストレーションで、ペダルに出てくるコラール旋律と一緒に柱時計のような音が「ボーン、ボーン」と鳴り出します。さらに最後のフレーズではツィンベルがチリンチリンと鳴り出して思わず笑ってしまいました。この曲はクリスマスの曲なのかな?そうではないような気がするけど。
 録音は1992年。楽器に関する解説は書かれていません。 ☆☆


Johannes Brahms : Das gesamte geistliche Werk für Chor und Orgel
  合唱とオルガンのための宗教作品全集
THOROFON DCTH2301/2 演奏者 ウルフェルト=シュミット
Ulfert Smidt (Orgel)
北ドイツフィグラル合唱団
Norddeutscher Figuralchor
ヨルク=シュトラウベ(指揮)
Jörg Straube (Ltg.)
CD番号 THOROFON DCTH2301/2(ドイツ)2枚組
収録作品
  1. 2つのモテット 作品74 Zwei Motetten für gemischten Chor a capella op.74
  2. 2つのモテット 作品29 Zwei Motetten für fünfstimmigen gemischten Chor a capella op.29
  3. 7つのマリアの歌 作品22 Siben Maeienlieder op.22
  4. 3つのモテット 作品110 Drei Motetten für vier- und achtstimmigen Chor a capella op.110
  5. 3つの宗教合唱曲 作品37 Drei geistliche Chöre für vierstimmigen Chor a capella und soli op.37
  6. 祝祭と記念の格言 作品109 Fest- und Gedenksprüche für achtstimmigen Chor a capella op.109
  7. オルガン作品全集 Das Orgelwerke
  8. アヴェ・マリア 作品12 Ave Maria für Frauenchor op/12
  9. 詩編13編 作品27 Der 13. Psaim (Orgelfassung) op.27
  10. 宗教歌曲 作品30 Geistriches Lied für vierstimmigen, gemischten Chor und Orgel op.30
使用楽器 ヴェルニゲローデ 聖ヨハネ教会 フリードリヒ=ラーデガスト製作
Ladegast-Orgel der St. Johannis-Kirch zu Wernigerode
 非常に立派で中庸な演奏です。取り立てて特徴があるわけではありませんが、深い精神性を感じさせる演奏です。今回紹介した中で、私としては一番気に入っているCDです。
 楽器は33ストップで、バロック風のかっちりとした音色だと思います。製作者はフランスのカヴァイエ-コルのところへ勉強に行ったりしているそうです。
 なお、合唱の指揮をしているシュトラウベ氏は昨年の夏に来日して、聖グレゴリオの家で合唱のワークショップを開催していました。
 録音は1998年。 ☆☆☆☆☆  ここまでの4種が店頭で購入したものです。


BRAHMS : SÄMTLICHE ORGELWERKE
  ブラームス:オルガン作品全集
ARS MUSICI AM1160-2 演奏者 カイ=ヨハンセン
Kay Johannsen
CD番号 ARS MUSICI AM1160-2(ドイツ)
使用楽器 ブレンツ ギーンゲン市の福音教会 リンク兄弟商会製作
Orgel der evangelischen Stadtkurche in Giengen an der Brenz. Orgel von Gebr. Link 1906
写真ではさほど大きく見えませんが、65ストップの楽器で、1977年に改修されています。明るい音色の楽器です。
 演奏者は1961年生まれの若い方です。演奏は取り立ててどうということはありません。下手ではないのですが、さりとて印象に残るような演奏でもありません。
 録音は1996年。  ☆☆


BRAHMS : Complete Organ Works
  ブラームス:オルガン作品全集
Nimbus NI5262 演奏者 ケヴィン=ボゥヤー
Kevin Bowyer
CD番号 Nimbus NI5262(UK)
使用楽器 デンマーク オデンセ 聖クヌーズ教会 マルクッセン社製作
Odense Domkirke - Sct. Knude Kirke Marcussen & Søn 1965
 どの曲もテンポが早めで、さらりと弾いている感じです。BGM的で強い印象は残りません。
 フーガ変イ短調と「おお悲しみよ、心の痛みよ」の前奏曲の異稿が収められているのは嬉しいです。
 楽器は59ストップ。詳しい解説は書かれていません。
 録音は1990年。 ☆☆☆


BRAHMS : Complete Organ Works
  ブラームス:オルガン作品全集
MDG3170137-2.jpg 演奏者 ルドルフ=インニヒ
Rudolf Innig
CD番号 MDG 3170137-2(ドイツ)
使用楽器 ライネ 聖ディオニシウス教会 クライスオルガン
Kleis-Orgel von St. Dionysius in Rheine
 スケールの大きい堂々とした演奏です。前奏曲とフーガはこのCDの演奏がいちばんいいですね。でも、コラールまで同じようにやられると、ちょっと風情に欠けます。コラール前奏曲にはもう少し繊細さがほしいと思いました。とはいいながら、これはこれで立派な演奏だと思いますが。
 楽器については詳しいことが書かれていません。49ストップです。
 録音は1995年。 ☆☆☆


おまけ

BRAHMS : ELEVEN CHORALE PRELUDES
  ブラームス:11のコラール前奏曲
RCA VICTOR LM-1853.jpg 演奏者 ヴァージル=フォックス
Virgil Fox
レコード番号 RCA VICTOR LM-1853(USA)
使用楽器 グロウススター ハモンド博物館
Hammond Museum Gloucestar, Mass
 古いレコードです。コピーライトが1955年と印刷されていますので。それ以前の録音でしょう。もちろんモノーラル録音で、盤にへこみがあったりします。
 11のコラール前奏曲と、各曲の前に同じコラールに基づくバッハの4声コラールが演奏されています。フォックスのことですからどんな演奏かと期待したのですが、奇を衒ったところはなく、全くオーソドックスな演奏でした。さすがに音質は情けないものです。
 ジャケットのデザインが非常に美しいので、中古盤店で思わず買ってしまいました。 ☆


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