ギユマンとコリャール

(03/8/1)

LOUIS-GABRIEL GUILLEMAIN (1705-1770) "Conversations Galantes et Amusantes"
 (優雅で楽しい会話)
Lindoro MPC-0710 演奏者
Poema Harmònico
Guillermo Peñalver (traverso)
Leonardo Rossi (vilin)
Ventura Rico (viola da gamba)
Aude Vanackere (violoncelle)
Juan Carlos Rivera (guitarra, luth)
Rafael Muñoz (theorbo)
CD Lindoro MPC-0710 (スペイン)
収録作品
Cuarteto op.12, nº 3 en Re Menor (四重奏 作品12の3 ニ短調)
Cuarteto op.12, nº 4 en La Mayor (四重奏 作品12の4 イ長調)
Cuarteto op.12, nº 2 en Si Menor (四重奏 作品12の2 ロ短調)
Cuarteto op.12, nº 6 en Do Mayor (四重奏 作品12の6 ハ長調)

 ギユマンって誰?私も最初は19世紀のオルガン奏者ギルマン (Alexandre Guilmant 1837-1911) のことかと思いました。いえいえ、そうではありませんで、ロココ時代の忘れられた作曲家の1人です。なぜか相次いで3枚も彼の作品のCDが手に入りましたので、なにかの「ご縁」があるやもしれぬと、ここにご紹介いたします。
 ルイ=ガブリエル=ギユマンについては、CDの輸入・発売元「(有)コーシン」のサイトで簡単に紹介されています。それには「ギユマンはパリ近郊に生まれ、ルクレールと同じくイタリアでソーミスに師事、帰国後ルイ15世の宮廷音楽家として活躍したヴァイオリニスト、作曲家。浪費癖があり、また演奏に対し非常に神経質で、そのためか過度の飲酒に陥り、死因は自殺であったとも言われている。」と書かれています。
 CDの解説文から補足しますと生年月日は1705年11月15日で、生まれた場所は "Chavulle" という所だそうです。イタリアでソーミスから学んで帰国した後ディジョンの音楽アカデミーの主席ヴァイオリニストになり、この職をつとめている間に再度イタリアを訪れています。1737年からはルイ15世に仕えています。とりわけポンパドゥール婦人に気に入られたようで、夫人の楽団に10年以上在籍していたそうです。音楽史上初の公開演奏会として有名な「コンセール=スピリチュエル」でも彼の作品は演奏されたそうですが、ギユマンは神経質な性格のためか、自身がソリストとしてステージに立つのをいやがったそうです。謎に包まれた彼の死についても、このステージに無理矢理引っ張り出されるのを気に病んで大酒を呑み、果ては自殺してしまったのではないかと、解説の著者は推測しています。亡くなった日は1770年10月1日で、その日のうちに埋葬されたとのことです。

 彼の作品としては、18の作品集が出版されましたが、これらはすべて器楽作品です。最近スペインの2つのレーベルから相次いでCDが出ました。いずれも初録音です。まずは作品12の四重奏曲集ですが、フルート・ヴァイオリン・ガンバ・通奏低音という、テレマンの「パリ四重奏曲集」と同じ編成の曲集です。ただし「パリ四重奏曲」が組曲の形式であるのに対し、ギユマンの四重奏はどれも4楽章の形式で作られています。しかも教会ソナタ(緩−急−緩−急)ではなく、後の弦楽四重奏曲のように曲の両端に早い楽章が置かれていて、斬新な感じがします。そして、フランスの作品によくあるような表題のついた楽章というのもありません。最初のニ短調の四重奏曲がとても美しい作品です。同じくソーミスに師事ながらルクレールとは違った感じで、むしろラモーのコンセールを思わせるような響きで、それにボワモルティエの愉悦感をミックスしたような感じです。もちろん他の曲も悪くありません。掘り出し物です。

LOUIS-GABRIEL GUILLEMAIN "DOUZE CAPRICES, Op.18 pour violon seul"
 (ヴァイオリン独奏のための12のカプリース 作品18)
EMEC E-048 演奏者 Gilles Cilliard (Violon barique)
CD EMEC E-048 (スペイン)
収録作品
Capriccio I-XII (カプリッチョ1〜12番)

LOUIS-GABRIEL GUILLEMAIN "AMUSEMENT, Op.18 pour violon seul"
 (ヴァイオリン独奏のための楽しみ 作品18)
EMEC E-054 演奏者 Gilles Cilliard (Violon barique)
CD EMEC E-048 (スペイン)
収録作品
  1. La Furstenberg
  2. Andantino
  3. Altro
  4. Allegro
  5. Gratioso
  6. Minueto
  7. Tamborino
  8. Altro
  9. Altro
  10. Allegletto
  11. Aria
  12. Allegro
  13. Allegro
  14. Gratioso
  15. Minueto
  16. Allegro
  17. Altro
  18. Chasse
  19. Minueto
  20. Altro
  21. Minueto
  22. Altro
  23. Minuetto
  24. Gratioso
  25. Altro
  26. Minueto
  27. Andantino
  28. Minueto
  29. Altro
  30. Andantino

 1762年に出版されたギユマン最後の作品集で、2枚のCDに作品18すべての作品が納められています。出版譜では "AMUSEMENT POUR LE VIOLON SEUL" が大きく書かれ、下の方に小さく "Avec donze Caprice du même Auteur" と書かれていますので、アミューズマンのほうがメインなのですね。でも、内容はカプリッチョのほうが華麗で、技術的に難しそうです。パガニーニのカプリースの先駆とか言われているだけあって、2枚聴くとどうしてもアミューズマンのほうが聴き劣りします。おそらく当時としては舞曲風の曲とその変奏という形で書かれたアミューズマンのような作品の方が一般受けしたのでしょう。けれども、ギユマンが世に問いたかったのは、本当はおまけとして付けたカプリッチョの方だったのではないでしょうか。
 それにしてもこれだけの作品を作った(=演奏できた)彼がどうして大勢の聴衆の前に立つのを嫌がったのでしょうか。謎ですねぇ。それと、作品12と作品18とではとはずいぶんと雰囲気が異なります。四重奏曲は宮廷のサロンなどで演奏されたことが容易に想像できますが、無伴奏ヴァイオリンの方はどういった機会に演奏されたのでしょう。フランスでは、ヴィオールの独奏曲ならサント=コロンブなどが思い浮かびますが、ヴァイオリンで無伴奏の作品というのはちょっと思い当たりません。ドイツでは無伴奏ヴァイオリンの作品が初期バロックの頃から数多く書かれていますし、イタリアでもロカテッリのカプリッチョのように協奏曲のカデンツァとして書かれたものはあります。もしかしたら、ギユマンはロカテッリの「ヴァイオリンの技法(1733年出版)」を知っていたのかもしれませんね。


 さて、2枚のCDで無伴奏ヴァイオリンの難曲をバロックヴァイオリンでバリバリと弾きまくっているコリャールさんは、「トゥールーズ・バロック管弦楽団とレマン管弦楽団のコンサートマスターを務めているピリオド、モダーン両刀使いのヴァイオリニスト」だそうです。彼の演奏では、タルティーニの「ボウイングの技法(コレッリのガヴォットに基づく50の変奏)」のCDを持っています。これはモダンのヴァイオリンを使っているようです。ついでにこちらも紹介します。正直言って50も変奏が続くのは少々飽きますけどね。彼がロカテッリの「ヴァイオリンの技法」を録音してくれたら嬉しいです。やってくれませんかねぇ。

GIUSEPPE TARTINI (1692-1770) "THE ART OF BOWING FOR UNACCOMPANIED VIOLIN, 50 variation on a Gavotte by Corelli"
 (ボウイングの技法 コレッリのガヴォットに基づくヴァイオリン独奏のための50の変奏)
DORON DRC3007 演奏者 Gilles Cilliard (Violon)
CD DORON DRC3007 (スイス)
収録作品
Thema, Variation 1-50 (主題、変奏1〜50)


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