ラモーのクラヴサン曲集いろいろ

(02/3/21)


 最近ラモーのCDをよく聴くようになりました。バッハのようなカッチリとしたものではなく、もっと柔軟なものも聴きたいと思うようになってきたようです。ラモーは以前はそれほど好きというわけでもなかったのですが、トシのせいでしょうか。それにクラヴサンのための作品の数はクープランのそれとくらべて4分の1程度のボリューム。CD2〜3枚に収まってしまいますので、さほど気合いを入れなくても購入できるのがありがたいです。
 ある本に紹介されているラモーの名盤は、@スコット=ロス、Aクリストフ=ルセ、Bウィリアム=クリスティーの順だとのことです。残念ながら、私は@とAを入手していませんので、それほどの名盤でないものを羅列いたします(失礼)。とはいえ、この手のものは演奏のみならず、録音・使用楽器等々様々なファクターによって好き嫌いが大きく分かれるのではないかと思います。
 では、録音年代の古いものから順にご紹介していきましょう。


1. ギルバート(Kenneth Gilbert)盤 Archev 427176-2
CDaFArchev 427176-2(ドイツ)
使用楽器
Dumont-Taskin, Paris, 1697/1789
J.C.Goujon, Paris, 1749
J.H.Hemsch, Paris, 1761
1976年3月の録音です。さすがにちょっと古さを感じさせられます。楽器はすばらしいのを使っているのですが、オンマイクなのでしょうか、ちょっとキンキンした耳障りな音です。
演奏はカッチリしていてあまり面白味がなく、聞き終わっても強い印象が残らないです。この人の演奏するフランスものはシャンボニエールとクレランボー(どちらもLP)を持っていますが、どちらも共通して印象が薄いです。バッハだと、そんなことないのですけどねぇ。


2.クリスティー(William Christie)盤 Harmonia mundi 1901120.21
CDaFHarmonia mundi 1901120.21(フランス)
使用楽器
Goujon-Swanen
Ruckers-Taskin
 録音は1983年ですが、決して古さを感じさせません。現在でも十分通用する音質です。さすがはハルモニアムンディ。
 演奏の方もナンバー3の名盤というだけあって今回紹介する中で最高のものだと思います。フランスバロックのスペシャリストだけあって、微妙にテンポを揺らし、非常にひねりが利いていて、しかもそれがいやらしくないのがすごい。ただ一つ残念なのは、Premiere Livre が収録されていないことですね。


3.ピノック(Trevor Pinnock)盤 CRD 35112
CDaFCRD 35112(英国)
使用楽器
Clayson & Garett(1972) after Dulcken(1745)
David Rubio after Taskin
Adam Burnett after Blanchet
 1988年の録音ですが、高音がきつく、せっかくのチェンバロが金属性の非常に耳障りな音になってしまっています。これでは聴き通すのがつらい。特にタスカンのコピーを使った演奏が目立ってキンキンした音です。
 演奏は若さあふれる元気なもので、非常に角のカッチリした楷書体のような演奏です。クリスティーとは対照的。ただ、もっと遊びがあってもいいんじゃないかな。もし再度録音してくださるなら期待が持てそうです。


4.シュピース(Noëlle Spieth)盤 SOCD 57/58
CDaFSOLSTICE SOCD 57/58(フランス)
使用楽器:Benoist Stehlin, 1767
 これも上のピノック盤と同じく1988年の録音ですが、音質はこちらの方がずっと良好です。フランスの録音技術はよほど優れているようです。さて、このCDの最大のポイントは使用している楽器でしょう。Stehlinというのは18世紀パリの製作者だそうですが、この人の作った楽器はたった3台しか残っていないそうです。これが非常に明快なすばらしい音色で気に入っています。
 演奏の方もクリスティーとまでは行かないものの、なかなかに優れています。私としてはこのCDをマイベストに挙げたいと思います。


5.ボウモン(Olivier Baumont & Martial Morand)盤 ACCORD 242962
CDaFACCORD 242962(フランス)
使用楽器
Donzelague (1716)
Goujon (Epinette, 1763)
Hemsch (1761)
Goujon-Swanem (1749-1784)
Couchet-Blanchet-Tasqin (1671-1757-1778)
 1988年から89年にかけての録音です。オリジナルのすばらしい楽器を何台も使っているのですが、どうしたわけか響きの少ないスタジオで録音したようなホールトーンのほとんどない録音で、非常に貧弱な響きに聞こえます。これは残念。
 バッハのフランス組曲で抜群の演奏を聴かせてくれたボウモンさんですが、ラモーもやはりすばらしいです。というか、こちらの方がお手の物という感じですね。このCDの最大のポイントは、3巻のクラヴサン曲集やコンセールの独奏用編曲の他に「優雅なインド人」組曲の鍵盤用編曲(1736年頃出版)が収められていることでしょう。いくつかの曲はクラヴサン2台用に書かれていて、特に最後のシャコンヌなどは圧巻です。とにかく、ひとえに録音が残念!


6.ロウランド(Gilbert Rowland)盤 NAXOS 8.553047
NAXOS 8.553048
CDaFNAXOS 8.553047/8.553048(香港)
使用楽器不明
 1994年の録音で、コンサートホールでの収録です。値段の安いナクソスですが、この録音はなかなかにすばらしいものです。ややオフマイクのようで、そのせいなのか、はたまた楽器の特徴なのか低音がちょっと弱い感じがしますが、繊細な感じがよくとらえられています。
 演奏の方はさほどの特徴が感じられませんが、端正な感じでとても好感が持てます。はじめてラモーを聴いてみようという方には安心してお勧めできるものだと思います。


7.ハース(Frédérick Haas)盤 CALLIOPE CAL9279
CDaFCALLIOPE CAL9279(フランス)
使用楽器:Henri Hemsch, 1751
 1998年の録音です。深みと奥行きを感じさせる非常に優れた録音だと思います。オンマイクに聞こえるのですが、それでいてホールの響きもよくとらえられています。
 演奏者は1969年生まれの若い方ですが、この演奏はすばらしい!ここで紹介するCDに順番をつけるとしら、クリスティーの次くらいに挙げたいですね。なお、このCDには新しい組曲とコンセールからの編曲が収められており、もう一枚(CAL9278)と対になってラモーのクラヴサン全集となります。こちらも欲しい。


8.イェーツ(Sophie Yates)盤 CHANDOS CHAN0659
CDaFCHANDOS CHAN0659(英国)
使用楽器:Andrew Garlick after Goujon (1749)
 これもすばらしい録音で、楽器の音が非常に美しくとらえられています。最近の録音はすごいですね。これならSACDが欲しくなってくるのも頷けます。
 使っているグジョンのコピーが非常に美しい音です。演奏者も楽器の音を美しく出すのに腐心しているような印象を持ちます。いかにも若い女性らしい(と、中年男が思い描くような)楚々とした演奏です。このCDはクラヴサン曲集第1集(1706)とクラヴサン曲集(1724/1731)が収録されています。その他の曲の録音は今後予定されているのでしょうか?


9.ランノウ(Blandine Rannou)盤 ZIGZAG ZZT010301
CDaFZIGZAG ZZT010301(フランス)
使用楽器:Marc Ducornet after Ruckers (1624) & Hemsch
 これで最後です。クラヴサン曲とコンセールによるクラヴサン曲が美しいジャケットの4枚のCDに収められています。これまた優秀録音で、文句のつけようがありません。昔からそうでしたが、マイナーなレーベルには優秀録音が多いようですね。
 さて、演奏の方ですが、他のCDとくらべて飛び抜けてテンポが遅く、ちょっと違和感を感じます。聴いているうちに慣れはしますけど、これはちょっと好みが分かれそうですね。確かにラモーは「早すぎる誤りを犯すよりは遅すぎる誤りを犯すほうがいい」と述べているようですけど、さて本当にそれでいいのかな。
 このCDでは「コンセールによるクラヴサン曲集」がなかなかすてきな演奏です。これだけは違和感のないテンポです。


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